その、衝撃性の高い題材から『北京バスターズ』『東宮西宮』(ビデオタイトル「インペリアル・パレス)などが、中国国内で上映禁止処分となってきたチャン・ユアン監督。これまで『ただいま』『クレイジー・イングリッシュ』『緑茶』『ウォ・アイ・ニー』など、現代中国の”今”を、率直に、時に赤裸々に表現し続けており、1994年にはタイム誌の「21世紀の世界の若きリーダー100人」に選ばれるなど、海外での高い評価を受けている。
そんなチャン・ユアン監督の新作『小さな赤い花』は、子供社会を通じ、中国の過剰な教育政策の在り方を、ユーモアを交えながらも、彼ならではの鋭い視点で描き出した作品だ。
4才の少年チアンが預けられた、北京にある全寮制の幼稚園。そこは「みんな同じであること」が賞賛される社会だった。最初は周りに迎合する努力をする彼だったが、次第に園内の教育方針に疑問を抱き、勇敢に一人で反抗的な行動に出る。しかし、校長先生の提案で次第に孤立していくチアン。早く大人になりたい、そうすれば自由になれるからと信じるチアンが、逃げ出した幼稚園の外で見たものは―――。
原作は、しばしば「問題児」と称されることもある、中国の人気作家ワン・シュオの半自伝的小説「看上去很美(Could be beautiful)」。ユアン監督は、シュオから原作本を渡されてから6年を準備期間にあて、自らの子供時代を思い出しながら本作の構想を練っていった。主役のチアン役には約5ヶ月かけて行われた2000人のオーデションの中からドゥン・ボウェンが選ばれた。演技経験は全くなかったが、たった独りで自分のいる社会と対峙していく姿を、可愛らしさと強さ、そしてそこはかとない悲哀をもって見事に演じきっている。また、チアンと同じ思いを分かち合う友人ナン・イエンには、監督の実の娘二ン・ユアンユアンが扮している。
脚本には、『ただいま』でもチャンとタッグを組んだ、ニン・ダイが、撮影は『夜の上海』『ルアンの歌』などのヤン・タオが、また、美術は『さらば、わが愛/覇王別姫』『MUSA-武士-』『王妃の紋章』などのフォ・ティンシャオが担当。日本人にとってもどこか懐かしさを感じさせる文革前の中国の幼稚園の風景を、豪華スタッフが再現している。また、『肉体の悪魔』などイタリアの名匠マルコ・ベロッキオとの仕事をしてきたカルロ・クリヴェッリの音楽により、作品に幻想的な雰囲気を与えている。
本作は、一見のどかな子供たちの日常のスケッチの中から、中国の画一化を計る教育政策が抱える矛盾をあぶり出し、観るものに「真の教育とは何か」を考える機会を与えてくれるだろう。
4歳のチアンは、自分の意思をもった聡明な少年だ。
ある日、彼は父親の仕事の都合で全寮制の幼稚園に預けられることになった。その園内では、良いことをした子供は紙で作った赤い花が貰え、聞き分けのない子供は逆に没収されていく制度があった。
先生や周りの友達に合わせ、「赤い花が欲しい!」と努力をするチアン。だが今まで甘やかされて育ってきた彼はオネショをしたり、着替えも一人でできなかったりと劣等生になっていく。次第に、園の厳しい統制に疑問を持った彼は、周りを巻き込み反抗的な行動を取り始める。先生を妖怪に仕立て上げ、子供たちに広めようとするが失敗し、お仕置きとして独房に入れられてしまう。最初はチアンの行動に賛同していた子供たちも、次第に離れていきチアンは孤立する。そんな状況に耐え切れず、幼稚園を飛び出したチアンが、外の世界で目にしたものは―――。

