監督:ベティナ・オベルリ(「ひとすじの温もり」)
キャスト:シュテファニー・グラーザー、ハイディ・マリア・グレスナー、アンネマリー・デュリンガー、モニカ・グブザー
2006年/スイス/アメリカン・ヴィスタ/89分/Dolby SRD/カラー/原題:Die Herbstzeitlosen
後援:スイス大使館/
提供:博報堂DYメディアパートナーズ/アルシネテラン
配給・宣伝:アルシネテラン

イントロ・ストーリー

スイスの小さな村、トループ村に住む80歳のマルタは、最愛の夫に先立たれ生きる気力をなくし、意気消沈しながら毎日をただ何となく過ごしていた。そんなある日、彼女は忘れかけていた若かりし頃の夢、“自分でデザインして刺繍をした、ランジェリー・ショップをオープンさせること”を思い出す。しかし保守的な村では、マルタの夢はただ周りから冷笑され軽蔑されるだけ。それでもマルタは友人3人とともに夢を現実のものとするために動き出す。スイスの伝統的な小さな村に広がる、夢に向かって頑張るマルタと彼女を支える仲間たちの夢と希望の輪。マルタの刺繍が、人々の心をやさしくあたたかく紡いでゆく—。
2007年、大阪ヨーロッパ映画祭で上映され、老若男女問わず大反響を得た『マルタのやさしい刺繍』。変化を恐れるのではなく、それをチャンスと受け止めて新しい一歩を踏み出すことにより、成長していく人々の姿を描きだした、勇気と希望と元気を与えてくれる、最高に心あたたまる物語だ。最愛の夫の死を乗り越えて再び夢に向かって挑戦していく80歳のマルタの姿は、思わず応援したくなり、観終わった後にやさしくて幸せな気持ちになれるだろう。

スイスドイツ語、フランス語、イタリア語、インド・ヨーロッパ語系のロマンシュ語など多くの言葉が存在するため、なかなか映画が大ヒットに繋がりにくい国、スイス。しかし本作は小さな劇場での公開にも関わらず、多くの観客の共感を得て、同年公開のハリウッド超大作を次々と抜き、堂々の動員数No.1に輝くなど社会現象を起こした。
監督は弱冠35歳の新鋭女性監督、ベティナ・オベルリ。『ファーゴ』『レザボアドッグス』のスティーヴ・ブシェミのもとで撮影技術を学んだ彼女は、本作では、エメンタール地方に住む自身の祖母の生活からヒントを得て、小さなコミュニティーが抱える問題を風刺しながらも、心あたたまる力強い作品を見事に描いた。
また、主演はスイスの“グレート・レディ”こと、本国では誰もが知っているお茶の間の人気女優シュテファニー・グラーザー。88歳となる彼女は意外にも本作がスクリーン初主演。そんなシュテファニーのチャーミングな演技はスイス映画賞主演女優賞にノミネートされるなど、本国で高く評価された。

キャスト・スタッフ

監督:ベティナ・オベルリ

1972年、ユングフラウ地方で有名な2つの湖に囲まれたインターラーケン生まれ。1995-2000年までにチューリヒ教育芸術大学で、映画・ビデオを重点科目として学び、2000年に映画監督として卒業。その後、ニューヨークなどでスティーヴ・ブシェミ監督のもとで、ルー・リードの音楽ビデオの撮影や、ハル・ハートリー監督のもとで、映画『ヘンリー・フール』の舞台装置アシスタントを務める。様々なコマーシャル映画、撮影助手、助監督を務め、スイステレビDRSでは、キャスティング・アシスタントを務める。2004年には、国際ボーデン湖会議の助成金を得ている。初めての長編劇場用作品、『ひとすじの温もり』は、サン・セバスチャンでプレミア上映され、チューリッヒ映画賞を受賞、スイス映画賞の“最優秀作品賞”にノミネートされた。他にも、映画監督として、NDR(北ドイツ放送)監督賞を受賞した。

■作品履歴■

2004年『ひとすじの温もり』
シネマ・アンジェリカにて公開/大阪ヨーロッパ映画祭出品
第15回シュヴェリン映画芸術フェスティバル監督賞受賞
2004年チューリッヒ映画賞、2005年スイス映画最優秀作品賞にノミネート
サン・セバスチャン、ケルン、モスクワ、サンフランシスコなど様々な国際映画祭に参加
2002年 『イビツァ』<短編> 監督・脚本・演出
オーバーハウゼン国際短編映画祭、少年映画審査委員賞受賞
作品第15回シュヴェリン映画芸術フェスティバル監督賞受賞
2000年 『スーパーノヴァ』<短編>  監督・脚本・演出
2001年スイスイメージ賞、スイス映画新人賞、“マックス・オフェリス賞”にノミネート
ボローニャ、ケルンなどの映画祭に参加
1999年 『夏の手紙』<短編> 監督・脚本・演出
1998年 『クララ&アルフレッド』<ドキュメンタリー>
1999年スイス・少年映画祭で「1999年シュピーツ賞」受賞

シュテファニー・グラーザー:マルタ・ヨースト

ノイエンブルク生まれ、チューリヒ在住。 スイスでも名が知られており、“グレート・レディー”と呼ばれるほど、人気のある大女優の一人。70年代には、土曜日の夜に人気を博した『テレボーイ』で、トラウゴッティという名の金魚を飼っているエリーゼおばさんの役を演じ、喜劇役者として有名に。その他にも数々のスイス映画やテレビドラマに出演、フランツ・シュナイダーによって映画化された、ゴットヘルフの作品や、『モーテル』、『女社長』、『シニアのタンゴ』シリーズ、ヴァーロ・ドイバー、ペーター・シュティーリンによる『同窓会』などにも出演。
また、ロカルノの国際映画祭で長年の業績を讃えられ、特別豹賞を受賞した。
主な映画出演作は、
『私の名はオイゲン』 (05)、『星の山』(04)、『バーゼルに死す』(88)、『同窓会』(88)、『警官ヴェッケルリ』(55)

アンネマリー・デューリンガー:フリーダ・エッゲンシュワイラー

商人の娘としてバーゼルに生まれる。ウィーン、ブルク劇場のアンサンブルに50年以上在籍し、シェークスピアのヴィオラ、タイターニア、ポルツィア、ヨーク公爵夫人、シラーのエリザベス女王、グリルパルツァーのエスター、サッフォー、ベルター、イプセンのボルクマン夫人、オーゼなど、女優としてあらゆる重要な役を演じてきた。1992年には、ヨーゼフシュタットの劇場でジェームス・サンダースの『よい時代』で演出家としてデビューを果たす。現在もブルク劇場アンサンブルのメンバーであり、舞台女優として活躍している。2005年、「ウィーンへの貢献による金名誉賞」を受賞した。
主な映画出演作は、
『クリムト』 (06)、『ヴォロニカ・フォスのあこがれ』(82)、『天使の影』(76)、『永遠のワルツ』(54)

ハイジ=マリア・グレスナー:リージ・ビーグラー

南ドイツ生まれ、スイス育ち。ドイツ、オーストリア、スイスで活躍し、1987/88年のシーズンからベルン市立劇場に出演。40年近い演劇人生で、劇作の様々な役柄を演じてきた。初期の頃にはシェークスピア(ロザリンデ、イザベラ、ベアトリーチェ、タイターニアなど)を多く演じるとともに、ドイツの古典作品も演じ、後にはチェーホフ(『カモメ』のアルカディアーナ、『桜の園』のリュボフ・アンドレジェフナ)、G.B.ショー(『傷心の家』)、イブセン(『幽霊』のヘレーネ・アルヴィング)、マクナリー(『マイスタークラス』のマリア・カラス)、など、多くの役を演じた。その他に、ミュージカル、音楽のジャンルでも活躍し、古典や現代文学の様々な企画に参加している。
主な映画出演作は、
『ハンディマン』 (06)、『お菓子』(05)、『リロとフレディ』(03)、『スイス・ラブ』(02)、『キリマンジャロ』(01)

モニカ・グプサー:ハンニ・ビエリ

1931年、スイス生まれ。16歳でチューリッヒの演劇学校(ビューネンスタジオ)に入り、チューリッヒ劇場の研修生となる。1949年、バーゼル市立劇場で初舞台を踏み、1951年から55年まではビール=ゾロトゥルン市連合劇場アンサンブルのメンバーだった。いったん家庭に入った後、1985年に復帰し、市連合劇場アンサンブルのメンバーに戻る。1990年以降、チューリッヒ・メルヘン劇場(支配人エリーリヒ・フォックのメンバーで、1994年以降は、ヴィンタートゥーア・サマーシアターのメンバー)で、『ヒ素とレースの帽子』、『レディ・キラーズ』、『真珠のようなアンナ』、『グラニー』など、その他多くの作品に出演している。
主な映画出演作は、
『きつね夫人』 (短編映画、05)、『ホイ、マーヤ』(短編映画、04)、『ラーゴ・ミオ』(03)

ハンスペーター・ミュラー=ドロサート:ヴァルター・ヨースト

1977年から1980年にかけてチューリッヒ劇場アカデミーに通い、俳優と演劇教育学の二つの専門教育を受けた。俳優としては、ノイマルクト劇場や、チューリッヒ劇場、ウィーン・ブルク劇場などで活躍した。『たくらみの恋』(シュテファン・ミュラー出演)、『アンティゴネ』(ハンス=ディーター・イェンドレイコ演出)、『リビングルーム』(クリスティアーネ・ポーレ演出)、『饗宴』(シュテファン・ミュラー演出)、『カールトン』(フォルカー・ヘッセ演出)、『習慣の力』(ハラルド・クレメン演出)、『旧世界より』(トースティン・フィッシャー演出)、『ブラック・ライダー』(シュテファン・ミュラー演出)などの作品に出演。1997年から2004年まではチューリッヒ演劇大学の演劇指導の講師もつとめた。
主な映画出演作は、
『カナビス』 (06)、『星の山』(03)、『アンナ・ヴンダー』(01)、『ペーストリー、痛み、政治』(97)、『焼ける夜』(94)

スペシャル

刺繍王国、スイス

時計とならんでスイスで有名なのが実は刺繍。時計と同じ様に精密な工芸に秀でた国なのである。
刺繍の切手、テーブルクロス、ハンカチなどにかわいいモチーフやレースを施したものが主流。

エメンタール地方

ベルンの東に広がる丘陵地帯。スイスを代表する“穴あきチーズ”の里としておなじみ。一帯には緑の牧草地が広がり、牛がのんびりと草を食む、のどかな風景が続く。大きな屋根、美しい花が飾られた小さな窓というエメンタール独特の農家の建築は印象的。奥にはアイガー、メンヒ、ユングフラウなどベルナーアルプスの山並も広がっている。

首都ベルンの町並み

湾曲するアーレ川に囲まれた街。かつてゲーテに「これほど美しい街を見たことがない」と言わしめたほど美しい旧市街は、1983年にユネスコの世界文化遺産に登録される。
大聖堂や13世紀の城門につくられた時報とともにベルンの紋章にもなっている熊が次々と現れる時計塔、彫像が美しい泉(水飲み場)が点在する町並みを残す一方で、スイス連邦の首都として便利な近代都市の機能も兼ね備えている。質の高い美術館や博物館も多く、ヨーロッパ最長ともいわれる石造りのアーケードや地下のケラー(貯蔵庫)など個性的な店が集まるショッピング天国でもある。

窓辺の花々〜バルコニーフラワー〜

美しく飾られた窓辺の花々もスイスの代表的な花風景。初夏から秋にかけて赤やピンクのあざやかな色をみせるゼラニウムの花は代表的なもの。世界遺産に選ばれたベルンのような中世の建物や、グリメンツやアッペンツェル、エメンタール地方のような伝統的な木造の農家や民家に飾られた花はひときわ美しい。

スイスの国民的カードゲーム ヤス(JASS)

スイスのポピュラーなカードゲームで、お茶をしながら楽しむのが一般的。遊び方としては、同じスート(マーク)のカードを順に出していって優劣を決める、単純なトリックテーキングゲーム。本作でも、マルタたちはアップルパイを食べながらJASSゲームを楽しんでいる。

デザートの定番アップルパイと、さくらんぼのお酒キルシュ(kirsch)

スイスのデザートの定番といえば、アップルパイ。キルシュ酒といわれる熟したさくらんぼで作られる香りの良いブランディーと一緒に頂くのがスイス流。

スイスの伝統料理 ベルナープラッテ(Bernerplatte)

固まりの牛肉やベーコン、牛タン、豚肉、鶏肉、ソーセージなどの肉類をスープでよく煮込んだ洋風おでん(ポトフ)のようなもの。ベルン州の代表的な伝統料理。日本のおでんと違い汁はなく、具にあたる肉やソーセージだけをとりだして大きめのお皿に盛りつけられる。

スイスアルプスの伝統の民謡ヨーデル

普段はヨーデル協会の支部ごとに地区大会がおこなわれ、歌声を競っているが、その全国大会にあたるのが「連邦ヨーデルフェスト」。各地区の代表グループが集まり、自慢のヨーデルのほか、アルプホルンなどの伝統音楽の演奏を地元の伝統の民族衣装をつけて、3年に一度会場となる町を毎回変えて開催される。