ストーリー

―ムーラン・ルージュの元ダンサー、ピエールは心臓病で余命わずかだと告げられる。助かる方法は心臓移植しかなく成功率は40%。彼は移植提供者を待つ日々を 静かに過ごすことを選ぶ。

―弟を案じ同居を始めるエリーズ。ソーシャルワーカーとして働きながら3人の子供を育てる彼女にとって日々はせわしなく、ただ過ぎていくもの。もう若くない と人生を楽しむことを諦める姉に「生きているんだ。人生を謳歌しなければ」とピエールは言う。そして、ピエールの今の一番の楽しみはアパルトマンのベランダからパリの街を行き交う人々を眺めることだ。

—歴史学者の第一人者ロランは、歴史を探究することに意味を見いだせなくなり、憂鬱な日々を過ごしていた。そんな時ソルボンヌで彼の講義を受ける、レティシアに年甲斐もなく恋をしてしまう。彼は、「君は美しい」と匿名のメールをカフェから送り続ける。

—ピエールの向かいのアパルトマンに住む美しいソルボンヌの大学生レティシアは、匿名のメールがロランだということがわかり最初は腹を立てるが彼を受け入れ関係を持つ。同時に同級生とも関係を持つ彼女は、なぜ自分はそうするのかを悩むこともなく、ただ日々を過ごしているだけ。

—ロランの弟フィリップは建築家で、今は左岸の開発地域での設計に取り組んでおり、間もなく子供が生まれる予定。自分では幸せな人生だと思っていた。しかし、兄から「お前はあまりにも普通すぎる!」と言われ悩んでいる。

—元夫婦のジャンとカロリーヌは、離婚後も同じマルシェで働いている。ジャンはいつも買い物に来るエリーズに好意を寄せ、カロリーヌは同じマルシェで店を構えるジャンの仲間といい関係になるが、お互いのことがまだ少し気になっている。

—ピエールが通うベルヴィルの街角のパン屋の女主人はいつも文句ばかり。従業員の働きぶりを出身地で決め付け、すぐにクビにしてしまう。

—カメルーンにいるブノワは、兄を頼りにパリに不法入国するつもりだ。彼は、カメルーンにバカンスで来ていたマルジョレーヌに再会することを楽しみにしている。

—華やかなファッション業界で働くマルジョレーヌ。毎日を気楽に謳歌する彼女には、ブノワの命がけの出国は遠いお話しだ。

パリという街の中で、一見接点のない彼らの日々が静かに交差している。そして、死を意識しはじめたピエールには、アパルトマンのベランダから垣間見る、街中で営まれている彼らの日常が突如として意味を持ち始めるのだった。様々な哀しみや喜びをそれぞれが抱えていて、たとえ彼らの問題が些細であっても、本人にとっては世界で一番重要な事柄なのだということに気づいていく。

姉にアパートの玄関で別れを告げ、最期の場所となるかもしれない病院へと向かうタクシーの中、ピエールにはパリの街と人々がとても愛しいものに感じる。そして、今、彼の目に映っているのは、陽光に満ちあふれたパリの空−